茶の木独自のうま味成分「テアニン」
昆布に含まれるグルタミン酸をはじめ、食品の“うま味”や“甘味”はアミノ酸によるもの。なかでもお茶の“うま味”と“甘味”を構成しているアミノ酸の約50%以上が、茶の木とそのごく近縁種にのみ含有されている「テアニン」。このテアニンはグルタミン酸に近い構造で、より上品な“うま味”と“甘味”が特徴です。ほかにも茶葉にはテアニン以外のアミノ酸として、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、セリンも含まれています。
テアニンは若い芽ほど多く含まれ、葉が成熟するにつれて減少します。そのため、玉露のように日光を当てずに被覆栽培をするとアミノ酸の変性が抑えられ、茶葉にテアニンが豊富に含まれた“うま味”と“甘味”が豊かなお茶が生まれます。このため、新茶や被覆栽培の玉露に“うま味”と“甘味”を多く感じ、一番茶よりも二番茶、緑茶よりも番茶の方があっさりとした味わいに仕上がるのです。
《主なうま味成分含有量の比較》
昆布♦(グルタミン酸:必須アミノ酸) 約2240㎎/100g 緑茶♦(テアニン)約600㎎~2g/100g +(グルタミン酸)約668㎎/100g = 約1268~約2668mg/100g※緑茶でも新茶や玉露であるほどテアニン成分が多い
≪緑茶の味わいを構成する3つの成分≫
■うま味・甘味 = テアニン、グルタミン酸 ■渋味 = カテキン類(ポリフェノール) ■苦味 = カフェイン ~この他緑茶に含まれる成分~ ビタミン類(C、B2、葉酸、β-カロテン、E)、サポニン、フッ素、γ-アミノ酸、ミネラル(カリウム、カルシウム、リン、マンガンなど)、クロロフィルなど
緑茶と長寿遺伝子
近年の研究では、植物に含まれる数々の機能性物質(フィトケミカル)が、互いの相乗効果により生命力を亢進させ、再生力の高い身体を築くことで、「長寿遺伝子」によい影響を与えることが判明してきています。なかでも緑茶に含まれるカテキンは、長寿遺伝子を活性化させるために必要な身体の条件づくり、低脂肪状態を保つための「抗肥満」「脂質代謝の維持」「抗コレステロール」作用で、
体内脂肪を減少させる効果が。遺伝子を活性化させるためには、香りや味覚、笑いや教養、運動など、日頃からハツラツと五感を使うことも大切ですが、日本人にとって傍らにいつもある“お茶”は、長寿のお供でもあったのです。 参考資料:『健康長寿に働く生理機能分子の探索と解析』 坂本和一(筑波大学生命環境系教授)